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性転換手術の「元男性」拘置所で女性施設に (読売・関西発 2005/07/10)
大阪拘置所(大阪市都島区)に収監されている20歳代の被告(覚せい剤取締法違反の罪で公判中)が、男性から女性への性転換(性別適合)手術を受けていることを理由に「男性として処遇されるのは耐えられない」として、戸籍上の性別変更を大阪家裁に申し立てて認められ、5月に女子用施設に移されたことが9日、わかった。心と体の性が一致しない「性同一性障害」を巡っては、昨年7月に施行された「性同一性障害特例法」で、同手術の実施などを条件に性別変更が可能になったが、拘置所や刑務所などの行刑施設が変更後の性で処遇したケースは初めてとみられる。 関係者によると、被告は「ニューハーフ」として飲食店で働いていたが、今年1月、知人宅で覚せい剤を使用したとして覚せい剤取締法違反容疑で大阪府警に逮捕された。数年前に性転換手術を受けていたが、戸籍上は男性のままで、起訴後に警察署から身柄を移された大阪拘置所でも、戸籍に基づいて「男区」と呼ばれる男子用施設に収容され、男性刑務官の監視下で生活全般にわたり、男性として扱われていた。 実刑が確定した場合、服役する刑務所では、坊主頭にし、男性用の受刑服や下着も着用しなければならず、被告は「精神的に計り知れない苦痛を受ける」と4月ごろ、特例法による性別変更を申し立てた。 これを受け、同拘置所は、被告が専門医から性同一性障害かどうかの診断を受けるために、刑務官が3回にわたって大学病院への通院に付き添い、家裁側の本人面談も調査官を拘置所内に受け入れて実施した。 大阪家裁は5月中旬、性別変更を決定。同拘置所は法務省矯正局などと対応を協議し、被告の経歴も含めたプライバシーにも配慮して、他被告と隔離した独居房を使う形で、「女区」と呼ばれる女子用施設に移す措置を取ったという。 被告は4月中旬の1審判決で懲役1年2月の実刑を受けたが、家裁の決定を待つため大阪高裁に控訴。今月19日の判決でも実刑を受け、確定すれば、女子刑務所に収容される見通し。 ◆ 大阪拘置所の話「個別の事案についてはコメントできないが、原則として戸籍上の性別に応じて処遇をしている」 ◆ 「男として監視されるのは屈辱」 「本当の性を無視され、『男』として監視されるのは屈辱」――。被告は中学時代から男の体を持つことへの違和感に苦しみ、成人して性転換(性別適合)手術を受けた後も世間から普通の女性と認められないことを悲観して自暴自棄に陥り、自殺未遂を繰り返すなどしてきた。 覚せい剤に手を出して逮捕後の拘置中、入浴中も監視されるなどしたため、うつ状態に陥った。女性らしさや体調維持のために欠かせない女性ホルモンの投与も認められず、連日、激しいめまいや発汗などに襲われた。 「人格を否定されて生きるのはつらく、更生の自信も持てない」。被告は、家族や弁護士のアドバイスも受け、性別変更に最後の望みを託したという。 現在、「女区」では週1回、医師による女性ホルモンの投与も受けている。 米国の連邦刑務所などでは性転換後の性に基づく処遇が一般化しているが、国内の行刑施設では男女区分は戸籍のみに準拠している。法務省矯正局は「受刑者から性的暴力を受ける危険性もあり、性転換した受刑者はできるだけ隔離処置をとっている」としているが、処遇に統一基準はない。 また、性同一性障害特例法は性別変更の要件として▽転換手術済みで独身の成人▽子供がいない――などと規定しており、国内に約1万人いるとされる同障害者で変更を申し立てたのは昨年末現在で130人にとどまり、認められたのは97人に過ぎない。 ◆ 菊田幸一・明治大名誉教授(犯罪学)の話「これまで表面化しなかった人権問題だ。戸籍という形式にとらわれず、収容者ごとの事情に応じた対応を取らないと、本人の苦痛はもちろん、他の収容者にも困惑が広がり、刑務官の負担も重くなるだろう」 (2005年07月10日 読売新聞) 法務省矯正局 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 (平成15年法律第111号) (2003/07/10成立・2003/07/16公布・2004/07/16施行) 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成17年法律第50号)(2005/05/25公布;公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行)
by alfayoko2005
| 2005-07-10 06:22
| トランス
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