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【書評】『カブールの本屋』アスネ・セイエルスタッド著 (産経 2005/07/17)
命がけで「ペンの力」を守る まず、本書のタイトルに目を奪われる。人々の生活が宗教と伝統に支配されている厳格なアフガニスタン社会と、自由な思想の象徴である本屋ほど、ミスマッチなものはない。違法とされた本や写真を扱うだけで、焚書(ふんしょ)や投獄の憂き目に遭う。この地で「ペンの力」を守り続けるのは命がけの商売なのだ。 本書はノルウェーの女性ジャーナリストが、タリバン政権崩壊後の首都カブールで、書店を営む一家と生活を共にしながらつづったノンフィクションだ。 満足に教育を受けられない人が多い国で、この一家は進歩的だといえる。博識な家長のスルタンは英語を流暢(りゅうちょう)に話し、西欧風の合理的な考え方も持っていて、妹や長男も英語を話す。巡礼に金と熱意を注ぐより、自分を磨き成功することを第一と考えるスルタンは、特定の思想に毒されていない教科書作りや書店業に情熱を燃やしている。 だがそんな一家ですら男尊女卑の伝統に縛られているのが悲しい現実なのだ。この国では女性に意志はなく、その人生は男性によって決められる。若い女性は金品との交換材料としてしか扱われず、自由恋愛など論外だ。男性と二人きりになっただけで激しいせっかんは免れず、家の名誉を汚したとして殺されることすらある。灼熱(しゃくねつ)の太陽と砂埃(ぼこり)の中、全身を覆い体の自由を奪うブルカの着用を義務づけられているのも屈辱的だ。 女性たちと寝食を共にした著者は、共感したり憤慨したりしながら、彼女たちの本音やリアルな感情をえぐり取っていく。だが本書の主題は西欧的な価値観の押しつけでも、単なるフェミニズム的告発でもなく「人間としてどう生きるか」というところにある。自己実現はおろか女性が人間らしく生きるという概念すら存在しない世界。男であるスルタンも、自分の頭で考える自由を勝ち取ろうともがいている。すべてを諦め「埃を食べ続ける」ことを選ぶ人も、闘い続ける人もいるこの国は、大きな変化の途上にある。(江川紹子訳/イースト・プレス・一八九〇円) フリー編集者 光森優子
by alfayoko2005
| 2005-07-18 06:38
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