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エイズ Crisis in the Making 日本に迫りくるHIV大爆発の危機 ゲイ男性と知らずに性交渉した女性への 新規感染が急拡大している デボラ・ホジソン トニー・マクニコル(東京) ダンサー志望のカズ(25)はゲイのメッカ、東京・新宿2丁目で売春をしている。だが、自分を同性愛者だとは思わない。 客は40~50代の既婚男性で、表向きは普通のサラリーマン。たまに女性客の相手もするし、軽いつき合いのガールフレンドもいる。HIV(Human Immunodeficiency Virus:エイズウイルス)に感染した友人が2人いるが、自分はきちんと予防しているつもりだ。コンドームを使わずに「特別料金」をもらうときも、相手が「清潔」かどうか爪や体臭をチェックする。 新宿のクリニックで定期検査も受けている。「怖いけど、感染したら入院して薬で抑える。ダンスが続けられるならそれでいい」 こうした危険な行為こそ、いま日本でエイズの脅威が再燃している理由の一つだ。7月1日から神戸で開催された第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議は、日本も世界的な感染拡大の潮流の中にあると警告を発した。インドやアフリカに比べれば規模は小さくみえるかもしれない。だが、問題は感染拡大のスピードだ。 昨年の新規感染者・患者の報告数は史上最高の1165人。6年連続で1割を超える伸びを記録し、累計で1万人を突破した。藤田保健衛生大学の橋本修二研究チームの推計では、検査を受けずに発症にいたるケースを計算に入れると、2010年には日本の感染者と患者は5万人に達するという。 現場の声はさらに深刻だ。「10代が検査を受ければ、実際にはもっと増えるはずだ」と、東京・六本木で診療所を運営する赤枝恒雄は指摘する。「5年か10年後に、エイズは大爆発する」 手ぬるい行政当局の対応 今年、アメリカで男性同性愛者の患者から従来のエイズ治療薬が効かないとみられるウイルスが検出され、世界のゲイ社会を震撼させた。だが、日本の一般社会ではあまり話題にならなかった。 日本の政府やメディアは「若者の間で」エイズが増加していると表現する。だが、2004年度新規感染者の6割近くは「男性同士の性交渉」によるものだ。「HIVがどこに集中しているか正面から見つめるべきだ」と、NPO(Non-Profit Organization:非営利組織)「動くゲイとレズビアンの会」の柏崎正雄は言う。 ただし、エイズはゲイだけの病気ではないと、専門家は警告する。感染率が上昇している台湾や韓国などと同じく、日本の男性同性愛者の多くは、カズの顧客のように表面上は異性愛者として日常生活を送っている。 もともと、性交渉で性器が傷つきやすい女性のほうがHIVへの感染の危険が高い。ゲイの男性の感染拡大を食い止めないかぎり、「感染リスクが高いグループ」に女性が加わるのは時間の問題だ。実際、いまアメリカの新規感染者で最も多いのは黒人女性だ。 日本のNGO(Non-Governmental Organization:非政府組織)は男性同性愛者の感染予防に熱心に取り組み、ゲイが集まる場所で性感染症に関するパンフレットやコンドームを配布している。だが、問題は政府や一般社会のサポートが外国のように厚くないことだ。 「日本の政府がうまいのは『ハコ作り』だけ」と、動くゲイとレズビアンの会の柏崎は言う。「コミュニティーセンターは建ててくれたが、そこで活動する人材やプログラムのための助成金はない」 エイズ予防に欠かせないのは、ゲイの発言権を高め、社会参加するゲイの共同体をつくっていくことだと、オーストラリア・エイズ連合のドン・バクスター代表は言う。「ゲイの若い男性が自分の性を前向きにとらえるようになれば、性交渉の相手にもコンドームを使ってほしいともっと毅然と求めることができる」 一方、日本政府の手ぬるい対応には非難が高まっている。神戸の国際会議終了後、アジア・太平洋エイズ学会のデニス・アルトマン会長は「日本はホスト国でありながら、会議のオープニングに政府代表者を送ろうともしなかった」と、痛烈に批判した。 会議直前には、世界エイズ・結核・マラリア対策基金に5億ドルの追加拠出を発表した。だがエイズ感染者数が増加しているにもかかわらず、厚生労働省のエイズ対策予算は毎年削られている。政府のやる気のなさの表れと批判する声もある。 もっとも、それほど単純な話ではないと厚生労働省は主張する。「薬害エイズ問題が注目された当時はエイズ対策が緊急課題になったため、かなりの予算が必要だった」と、同省担当者は語る。「だが、今はある程度環境が整ったので、より重点的な研究分野に配分の見直しを行っている」 政府の腰は重くても、草の根の活動家たちは即効性がある対策を見つけていくしかない。エイズ予防教育を研究する京都大学の木原雅子は、看護師と中高校教師を対象に「性とエイズの教育」に関する講座を開設している。神戸の国際会議では木原の講演に全国から150人の教師が出席した。 「明日はわが身」の認識を なかでも教育関係者が心配しているのが、地方の若者だ。都会と同じくらい性体験のある子が増えている一方、一般的に性感染症や予防法に対する認識が低い。「地方の中高生はエイズを都会や外国の問題だと思っている」と、木原は言う。 エイズは外国人の病気という思い込みはよく見受けられるが、実情は違う。現在、国内の感染者・患者のうち外国人は27%だ。「外国人を責めるより助けるべきだ」と、神奈川県勤労者医療生活協同組合の沢田貴志は言う。保険に加入できず、治療費も高額にのぼるため、在留資格がない多くの感染者は治療を受けられないまま命を落としているのが現状だ。 現在、エイズ対策はジレンマをかかえている。外国人や売春婦、同性愛者など「感染リスクが高いグループ」への支援は重要だが、そこに注目しすぎると、エイズが一般社会に蔓延しつつある現実をなかなか認識してもらえない。 インターネットのHIV関連サイトを見ても、感染者は子供をもつ母親から異性愛者の男性まで多岐にわたる。「大切なのは、エイズがとても幅広い病気だと認識することだ」と、HIV感染者であることを公表しているゲイの活動家、長谷川博史は語る。 確かに、自分にも感染する可能性があると認めないかぎり、対策を訴える声は耳を通り抜けていくだけかもしれない。 ニューズウィーク日本版 2005年7月20日号 P.40
by alfayoko2005
| 2005-07-20 09:35
| HIV/AIDS
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