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特集WORLD:参院自民の「青木パワー」に言いたい 中村敦夫氏/岩井奉信氏 (毎日 2005/08/01夕刊)
郵政民営化法案は果たして参院で可決されるのかをめぐり自民党の青木幹雄参院議員会長がクローズアップされている。竹下登元首相の秘書を務め参院議員として初めて官房長官に就任。その影響力から参院は「ミキオハウス」とも呼ばれるという。青木さんのパワーが試されようとしている今、問い直した。【山田道子】 ◇政策や理念は二の次で、自民党村社会の調整役として存在感。今や村自体が存亡の機にある--俳優・前参院議員、中村敦夫氏 青木さんは日本の戦後政治をリードしてきた保守政治家の典型だ。つまり調整能力を発揮し評価されるタイプだ。調整は自民党が権力を握り続けるため税金を再分配する時に行われるが、配分をめぐり争いごとが起きるとそれが決定的になる前に収めてしまうのだ。調整役は田中派そして竹下登元首相の経世会に引き継がれたが、竹下さん亡き後は、表の派閥会長にリーダーシップや人望が欠けたので竹下さんの秘書の青木さんが実権を握るようになった。 しかし調整の政治は行き詰まった。そこに派手なパフォーマンスで登場したのが小泉純一郎首相だ。私は小泉改革の本質は、経世会が握っていた利権を森派が争奪する動きだと思う。その結果経世会は劣勢に立つが、改革に理念がないだけに正面から戦えない。となれば争いをあまり露骨にしないで自民党が権力を維持できるように調整するということで、青木さんががんばっている。 青木さんは個人的には話の分かるいいおじさんだ。自民党という政党は、政策は官僚任せで理念や政策を重要視してこなかったので青木さんのような人格が非常に力を持った。私が「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」案を人権面から何とか成立させたいと思った時、新しい次元の法案なので官僚は面倒臭がり、理解してくれない議員も多かった。 そこで青木さんに直談判に行ったら、「よし引き受けた」と言ってくれた。法案の意味はよく分からなかっただろうが、そんなに一生懸命ならと反対議員を抑えてくれた。正面から切り込むのではなく裏木戸から入って人間的なアプローチをすると向こうも人情味を見せる。政策や理念は二の次。それは自民党議員の特徴だが、日本全体にもそのような特徴、つまり地縁血縁とか親分子分の関係が重きをなす村社会の論理が色濃く残っているからだろう。 青木さんは村長(むらおさ)ということで存在感を保っている。小泉首相についても、家族の中に変わり者のやんちゃ坊主がいるがあと1年もたてばいなくなる。そうなれば村や家の雰囲気もがらっと変わるから、やんちゃ坊主があばれているうちはあまり逆らわないほうがいいという感じなのだろう。 しかし外から見ると村自体が存亡の機にある。やんちゃ坊主のせいで解散・総選挙の可能性も高まっている。が、民主党にしても21世紀を生き抜く大きな理念や政策というものを打ち出しているかというと、それによって成り立った政党ではない。進路が分からないまま船の舵(かじ)の取り合いをしているように見える。海を知らなければ船ごとひっくり返る。 ◇説得材料もなく選挙の脅しもきかぬ中、実は誰も検証していない実力が初めて試される--日本大法学部教授・岩井奉信氏 参院は衆院から格下と見られ、法案審議でも衆院のあおりを食うことも多く、両者の関係は以前から悪かった。自民党旧田中派は参院に多くの業界代表の議員を誕生させて王国を築いた。竹下登元首相の秘書だった青木さんはその参院の資産を引き継いだ格好だ。 特に参院で自民党が過半数割れして、連立を組まざるを得なくなってから参院の発言力は急速に強まった。そもそも下院優位が確立している世界各国の2院制の中で、法案を成立させる上で両院が対等な参院の立場は「強過ぎる」との批判もあった。実態面でも参院がうんと言わないと法案が通らなくなったので、参院の代表者としての青木さんの力は一層増した。 青木さんは「参院のことしか考えていない」と言われる。03年秋の総裁選で小泉純一郎首相を支持したのも参院選に勝つためだった。が、今回の郵政民営化法案はどうか。これまでは衆院に対して「参院の言うことを聞け」と主張できることで青木さんの存在価値があったし、青木さんも「私の言うことを聞いたほうが得だ」と参院を説得できた。しかし今回はベクトルが逆。参院に対して損になりかねないことを無理強いしなければならないし説得材料もない。 実は誰も検証していない青木さんの実力が試される、初のケースだ。小泉さんの政策について業界や地方からは怨嗟(えんさ)の声が高まっている。参院の青木支配に対しても若手から「ウザイ」という声も聞かれる。次の選挙は2年後で、小泉さんの下ではない。選挙をタテにした脅しがきかないだけに青木さんがどこまでできるか疑問だ。 そもそも郵政民営化はマニフェストで掲げたものなのになぜ自民党内で反対が出るのか。政党政治自体が問われている。また衆参一括して党議拘束をかけるというのも院の自律性を無視したやり方だ。参院には参院の論理があっていいはずだ。青木さんの存在は参院の独自性確保という点ではある程度の役割を果たしたのかもしれない。が、それを徹底するなら参院に法案が来てから独自の修正をすべきだったのに、衆院の修正協議に片山虎之助参院幹事長が加わったから筋が通らない。 さらに法案審議が始まって権力闘争が起こり、話が政策ではなく政局になってしまった。参院の本来あるべき姿は「良識の府」としてきちんと政策の議論をすることではないか。権力の基盤ではない参院は政局にはかかわるべきではない。青木さんがいることで政局の鍵を握れるようになってしまった面もあるが、それは憲政の常道から見てどうなのか。参院のことを抜本的に考え直す機会でもある。 ……………………………………………………………………………………………………… ■人物略歴 ◇なかむら・あつお 1940年東京都生まれ。東京外語大中退、ハワイ大留学。俳優、キャスターとして活躍後、98年東京選挙区から参院初当選。00年「さきがけ」代表(02年に「みどりの会議」)。04年政界引退。 ■人物略歴 ◇いわい・ともあき 1950年東京都生まれ。慶応大大学院博士課程修了。常磐大人間科学部教授を経て現職。政治学専攻。著書に「立法過程」(東京大学出版会)、「政治改革1800日の真実」(講談社、共著)など。
by alfayoko2005
| 2005-08-02 02:46
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