エイズ子どもセミナー 世界で約４千万人感染→「正しい知識を学ぼう」＝ＹＪＰ (読売 2005/09/08夕刊)

エイズ子どもセミナー　世界で約４千万人感染→「正しい知識を学ぼう」＝ＹＪＰ (読売 2005/09/08夕刊)

　◆「ＨＩＶ／エイズ」子どもセミナー　

　みなさんはエイズという病気について、どれだけ知っているでしょうか？　ＨＩＶ（ヒト免疫不全（めんえきふぜん）ウイルス）に感染して起こる病気です。世界にはＨＩＶ感染者が約３９４０万人（昨年末現在）もいて、昨年だけで３１０万人が亡くなりました。東京・高輪のユニセフハウスで、「音のない戦争――ＨＩＶ／エイズについて考えよう！」と題した子どもセミナーが開かれ、ＨＩＶ／エイズについて学び、私たちで何ができるかについて考えました。（中１・会田彩、高１・原田友莉子、高２・関根万里子、高３・松本真実記者）

　主催は日本ユニセフ協会で、小学生から高校生まで約５０人が参加しました。まず、エイズ予防財団国際協力部の橋本幹雄さんが、「僕らの隣のＨＩＶ」と題して講義を行いました。

　ＨＩＶは母乳やセックス、注射器などから感染し、せきやくしゃみ、触れただけでは感染しません。感染すると半年から１５年の潜伏（せんぷく）期間後に発病（エイズ患者になり）、体の免疫力がなくなって、病気にかかりやすくなります。

　世界の全感染者の３分の２はサハラ砂漠より南のアフリカに住んでいますが、近年、東アジアや中央アジア、東欧で急増しています。感染者が途上国で広まっている原因について橋本さんは、「多くは出稼ぎ先でのセックス」を挙げ、「正しい知識を多くの人に身につけさせることと、母親への家計支援のための職業指導などが必要」と言います。
日本も１万人超　また、わが国のこれまでの感染者は昨年、１万人を超えましたが、「検査を受けていない人もおり、１０万人いてもおかしくない」とも話しています。

　エイズの発病を抑える薬が開発され、それを服用することで、ウイルスの数を減らし、感染者も普通の生活ができるようになりましたが、飲み忘れたりすると効かなくなります。また、１日分が１ドルで買える薬も開発されたものの、途上国では高額なためあまり普及していません。

　この後参加者たちは、アフリカ・スワジランドのエイズ孤児（こじ）兄弟と、タイのエイズホスピスで暮らす子どもたちの様子を伝えるビデオを見ました。子どもだけでさびしく暮らす姿や、発病してやせ細った子どもの姿は、とてもショックで、エイズのもたらす深刻さを痛感させられました。

　そして、「もし父がＨＩＶに感染したら」をテーマに、グループで話し合いをしたところ、「周りの目が怖い」「いじめられそう」といった差別を心配する声が多く出されました。

　最後に、「自分たちにできることは」「大人たちにしてもらいたいことは」について話し合い、その結果を発表しました。「授業で、資料を用いたり講師を呼んだりして、もっとＨＩＶ／エイズについて学び、理解を深める」「哀れみではなく、同じ人間、パートナーとして接する」「無責任なセックスはしない」といった意見が出されました。

　神奈川県鎌倉市立小坂小６年熊澤天衣（てんね）さんは、「途上国では相当深刻な問題になっていると思いました。自分たちの幸せを分けてあげる方法を考えたい」と、また東京・中野区立北中野中２年栗原瑛尚（あきなお）君は「参加できなかった生徒たちに伝え、行動を起こしていきたい」と話していました。セミナーの司会を務めたユニセフ子どもネットの品川夏乃さん（宇都宮文星女子高３年）も、「これからもっと具体的な行動を起こしていきたい」と話しています。

　多くの人に苦しみをもたらすＨＩＶ／エイズ。差別も大きな問題です。すぐに発病してしまう病気でないことを知ってもらうとともに、自分や周りの人が感染する可能性のある身近な問題としてとらえることが大切だと思いました。
　　　　　　
　写真＝エイズについてグループで話し合ったことを発表する参加者たち