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中大・読売リレー講座 「家族の形」模索 シンポジウム意見活発 (読売・多摩版 2005/09/25朝刊)
中央大学文学部と読売新聞立川支局共催によるリレー講座「恋愛、家族、そして未来」の第6回が、24日、同大多摩キャンパス(八王子市東中野742)で開かれた。今回は約500人の参加者を前に、文学科国文学専攻の宇佐美毅教授が「村上春樹――喪失の時代/恋愛の孤独」と題して講義。村上作品の特徴を読み解きつつ、多様化する恋愛観について語った。また、引き続いて、教員らによるシンポジウム「人と人との新しいつながりを求めて」を開催。これまでの講座内容をふまえて、人間関係の現在と未来に目を向けた。 今回のシンポジウムは、全13回の同講座が前半6回を終えたことを契機に行われた。中村昇教授(哲学科・8月に講義)の司会で、中尾秀博教授(文学科・4月に講義)、杉崎泰一郎教授(史学科・6月に講義)、野口薫教授(文学科・来年2月25日講義予定)、西野芳明読売新聞立川支局長のパネリスト4人が、意見を交わした。 西野支局長がまず、「映像や音楽を使った講義は、とても好評。舞台裏を教えて」と先陣を切って教授陣に質問。中尾教授が「テレビ放送や映画評論家を参考に、自分がおもしろいと思う授業をする」と現在の大学の授業の進め方の一端を披露した。 本題に入り、各教授が専門分野を踏まえ、各国の家族の変遷を紹介した講義内容を振り返った。西野支局長が「各国の家族の形の現状と将来は」と問いかけると、中尾教授は「スペイン語を母語とするヒスパニック系住民の急増は、21世紀のアメリカ社会に大きな影響を与えるだろうと言われている。彼らはカトリックを信仰し、家族観も異なるから」と宗教観の違いが社会に与える変化に言及した。 杉崎教授は「事実婚が多いフランスでは、そういうカップルが不利益を被らないように、社会制度が変更されている。現在はむしろ同性愛者が結婚や子どもを望む場合の議論の方が活発」と紹介。 野口教授は、ドイツについて、世界大戦での2度の敗戦とナチスの犯罪が家族のあり方に大きな変化をもたらしたと前置きをし、「父親の権威は落ち、男性が居場所を失った。現在は互いに離婚を経験した後に結ばれた『パッチワークファミリー』など、ありとあらゆる家族の形態がある」と現状を説明した。 続いて、「我々日本社会での家族の形はどうか」と話題は移り、中尾教授が、今夏の全国高校野球大会のチームで暴力事件が問題になった事を例に挙げ、「暴力が父権の象徴だったこともあった。暴力が批判されるのは、強い父性が時代に合わなくなっているのだろう」と分析した。 一方で杉崎教授は「ある状況に限って、強烈な指導力が必要とされていると感じる事がある。小泉劇場のように、人間はある時、強い指導者を求めてしまうのだろうか」と述べた。 最後に中村教授が「伝統的な価値観や倫理的なものがなくなり、人間関係を築くうえで新しく指針を作らなければならなくなったとしたら」と問いかけると、中尾教授が「学生と一緒にビデオや映画を見て、同じ体験を共有すると、上下ではない関係の可能性を感じる」と一例を紹介した。 ◆「色々な見方実感」 シンポジウムを聞いて、小平市仲町の会社員根岸成喜さん(56)は、「家族観や恋愛観に色々な見方があると感じた。今、子どもが大きくなり、難しい時期。これを機にもう一度、家族のあり方を考えてみたい」、日野市平山、無職森川紘一さん(63)は、「ドイツの戦前戦後の父権の移り変わりに強く興味を引かれた。家族の中での父の権威の歴史的変遷が良くわかった」と話していた。 ◆村上春樹の恋愛観示す 宇佐美教授が講義 恋愛小説として大ヒットした「ノルウェイの森」は、本当に恋愛小説だったのか――。今回の講座で宇佐美毅教授は、日本国内のみならず、世界各国でも多くの読者を獲得している村上作品の特徴を検証しながら、現代の恋愛観を浮かび上がらせようと試みた。 講座冒頭で宇佐美教授は、日本文学の外国での受容のされ方が変遷し、かつてのように“異国趣味”で読まれるのではなくなっているとし、日本の作家としては海外でもっとも読まれている村上作品が各国で“共感”を呼んでいることを指摘。さらに、韓国では、「ノルウェイの森」の翻訳版を「喪失の時代」という題名で出版され、人気を呼んだことを紹介し、“喪失”が村上作品のキーワードとなることに着目。いくつかの作品を例示しながら「ただ、そこに漂う深い喪失感は、具体的な何かを失ったことに対するものではなく、生きていく上での理想や規範、設計図を失っている状態に対するもの」と説明した。 そんな村上作品の中でも、“恋愛小説”として大ヒットしたのが、1987年に刊行された「ノルウェイの森」。だが、宇佐美教授は、「果たして本当に恋愛小説だったか」と問題提起し、最近の“純愛ブーム”のけん引役となったテレビドラマを対比して見せながら検証を試みた。 例示したのは、2001年に出版された小説を原作とする「世界の中心で、愛をさけぶ」で、恋人の死の直後に主人公の心の中が「空っぽ」になってしまった様子の映像表現や、「冬のソナタ」をはじめとする韓流ドラマの中のせりふ。これらを通じて〈だれかをおもうことで自分の人生に意味があると思える〉という共通の概念があることを明快に示し、それらは古くから存在する“ラブストーリーの王道”だとした。 翻って「ノルウェイの森」には、そのような概念は登場しない。人を好きになる気持ちは出てきても、恋する情熱や、人をおもうことで人生に意味があると感じさせる部分はない。それを、宇佐美教授は村上作品における“恋愛の不在”または“恋愛の孤独”と呼んでみせた。しかし、その一方で、結末では必ず〈人とのつながりへの渇望〉や〈人とつながった世界で生きることへの迷いと決意〉が示唆されていることにも言及。「読み終わってもさらに広がりを感じさせる『閉じられない作品』の典型」と位置づけ、その先の未来を予感させるとした。 さらに、宇佐美教授は、純愛ブームの一方で、村上作品が今も幅広く読者を獲得しているのは、〈人とつながることへの迷い〉〈好きという気持ちをかすかに持ち続けることにより人とつながって生きていこうと決意する〉ことに対する共感が多いからではないかと分析。「画一的な恋愛観ではとらえられない世界が広がってきているのかもしれない」と結んだ。 ◆予習効果は上々 日野市程久保の熊本みよきさん(76)は、「『ノルウェイの森』を読み直して講座に臨みました。村上氏が何を言いたいかがよくわかりました」と予習の効果は上々だった様子。村上春樹の大ファンだという八王子市上柚木のアルバイト田中美佳さん(26)は、「村上作品のどこがいいのか自分ではうまく説明できずにいた。今日の説明は、自分の気持ちを代弁していて聞いていて気持ちよかった」と話していた。 写真=人と人との新しいつながりをテーマに話すパネリストら(中央大学多摩キャンパスで) 写真=真剣な表情で聞き入る受講者 写真=村上作品をわかりやすくひもとく宇佐美毅教授
by alfayoko2005
| 2005-09-26 00:43
| ジェンダー・セックス
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