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かがく批評室 「反進化論」の今 「神」を棚上げする創造論運動 (朝日 2005/10/19夕刊文化面)
鵜浦 裕 文京学院大教授(アメリカ研究) うのうら・ひろし 上智大大学院博士課程修了。著書に『進化論を拒む人々』(勁草書房)、『チャーター・スクール』(同)など。 聖書の「創世記」には神による天地創造の詳しい記述がある。それによると、生物はそれぞれ別個に造られ、「それぞれの種類kindにならって」繁殖してきたため、生物には類縁関係や変化がない。ヒトは最初からヒトとして造られ、今も変わらない。 この「神による個別的な創造と生物の不変」を教義とするキリスト教創造論に対し、ダーウィンらによる生物進化論は、生命が数十億年かけて共通の祖先から系統的に枝分かれし、現在の多様な生物種に至る歴史を描く。 「新手の科学論」で勢い 創造論にとって、それは無神論以外の何者でもない。信仰に代えて同性愛、人工中絶、安楽死などの「害毒」をまき散らし、社会を滅ぼす。この無神論から子どもを守ることが創造論のもう一つの教義である。 おそらくこの国だけであろうが、アメリカでは創造論運動が公教育において政教分離原則を踏み越える事件を起こしてきた。1920年代南部で反生物進化論州法が、そして80年代に「創造科学」と生物進化論の授業時間数を同じにする「均等化」州法が成立した。しかしこれらの州法はすべて合衆国憲法修正条項第1条(「国教樹立の禁止」)に基づき無効とされてきた。 ところがここ数年、「インテリジェント・デザイン論」という「新手の科学論」で勢いづいた創造論運動が、再び各地で生物進化論をめぐる教育論争を巻き起こしている。 このインテリジェント・デザイン(以下、IDと表記)論の起源は古く、19世紀初頭にさかのぼる。英国教会の神学者ウィリアム・ペイリーは、部品が偶然に絡み合い懐中時計になることがないのと同じく、複雑な機能を備えた脊椎(せきつい)動物の目も偶然だけでは生まれない、その複雑なデザインは創造主の存在を証明すると主張した。 現代のID論はしょせんペイリーのリメイクにすぎないものの、分子生物学の用語も用いて、生命の複雑な構造には、ランダムな変異と自然選択では説明できない「デザインがある」と、限定的に主張する。 つまり、あえて神の存在や創造の細部に触れないのである。そうすることで、創造論内部の対立を棚上げする。 「アメリカ的価値」熟知 このデザイナーぬきのID論を推進してきたのは、保守的な銀行家や宗教団体が支える、シアトルのディスカバリー研究所である。とくにこの10年間、創造論運動の指導的組織として、次のような戦略で支持層を拡大し、今後の動向が注目される。 第一に、潤沢な運動資金を奨学金や研究費にあて、「批判」研究を出版させ、マスコミを利用し「生物進化論をめぐる科学論争」の既成事実化をすすめた。 第二に、教育論争においても政教分離の原則内で論陣を張れるよう、「神による創造」を争点からはずし、「生物進化論VS.デザイン」の対立軸を設定する。 第三に、この対立軸を「信仰の否定VS.信仰との調和」の対立軸に重ね合わせることで、これまで生物進化論教育を受け入れてきた中道派市民に、それは科学教育としても信仰としてもふさわしくないことを説得する。 第四に、彼らの支持で当選した州議会議員や教育委員が、対象を特定せず「論争がある場合には賛否両論を公平に教える」という、遠まわしの表現を州や学区の教育方針に滑り込ませる。オハイオ、ニューメキシコ、ミネソタでは州レベルでこの規則が制度化され、カンザス州でも検討されている。 考えてみると、これらはいずれもきわめてアメリカ的な文化価値を熟知した戦略である。国民の圧倒的多数が支持するキリスト教の神と道徳、論争に公平性を重んじる伝統、公教育における納税者や保護者の意見の尊重、州政府や学区教委の独立性など、その力で潜在的な支持層を掘り起こす政治センスに、創造論の動員力があるのだろう。 逆に効果的な施策や有益な研究であるとしても、反キリスト教道徳というレッテルをはられると、社会的支持を得るのが難しくなる。じっさい、現実主義的なエイズ対策、ES細胞研究やクローニングはかなりの影響を受けている。 科学に干渉するキリスト教保守道徳と宗教的無害を説明できない科学、傾国のドグマになるのはどちらなのだろうか。 (写真)サンディエゴ近郊にある「創造研究所」の博物館を見学する小学生。地球の歴史が聖書に基づき説明される=筆者撮影
by alfayoko2005
| 2005-10-19 16:43
| バックラッシュ
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