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中日春秋 (中日 2005/11/25)
そのニュースの衝撃は多くの人が記憶していよう。三島由紀夫氏が東京・市ケ谷の陸上自衛隊に乱入し、「楯の会」の学生一人とともに割腹自殺したのは昭和四十五(一九七〇)年の今日だ ▼ノーベル文学賞候補と目された世界的な作家。「潮騒」ぐらいしか読んだことのない少年たちにも、事件は驚きだった。神話を思わせるようなその作品の美しい世界と、この事件とは容易に結びつかなかった ▼氏の年譜で、戦争末期の昭和二十年二月は興味深い。入営通知が来て入隊検査を受けたが、高熱の風邪をひいていて「胸膜炎」と診断され、即日帰郷となった。過酷な軍隊体験を知らないから氏はあんな軍隊幻想を持ち続けたのだという、同世代の識者の指摘を読んだことがある ▼ただ氏は「愛国心」という一文でこの言葉を「あまり好きではない」と語っている。「この言葉には官製のにほひがする…どことなく押しつけがましい」と。「われわれはとにかく日本に恋してゐる」とも書き、日本人の心中にある母国への自発的で自然な感情を重んじたのだろう ▼社会学者の宮台真司氏が前に書いていた。三島氏によれば、愛国は国民の義務でなく権利でなければならず、だから政治ではなく文化であると。今「愛国心の義務」を唱えるような政治の動きを健在だったらどう見るか。自衛隊が米軍の付属物と憤った改憲論者の氏は米追従が目立つ中での改憲論をどう語るだろう ▼死して三十五年。事件を容認できるわけがないが、氏はなお、その作品とともにこの国をさまざまに考えさせる。 【天声人語】2005年11月25日(金曜日)付 朝日 19世紀のフランスの詩人ボードレールの散文詩「パリの憂愁」には、人間の首にとりついて離れない魔物「噴火獣」が出てくる。三島由紀夫は、初期の代表作「仮面の告白」の自序原稿の一つに「人みな噴火獣(シメエル)を負へり」と訳詩一行を記した。 「仮面の告白」は、戦後間もない昭和23年、1948年の今頃から書かれた。「さて書下ろしは十一月廿五日を起筆と予定し、題は『仮面の告白』といふのです」と、編集者に書き送っている(『決定版 三島由紀夫全集』新潮社)。 それから22年後の70年の11月25日に、三島は東京の陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で自衛隊の決起を訴え、割腹自殺した。ノーベル賞候補にもあげられた文学の他、ボディービルや剣道、映画出演といった多彩で華やかな活動の果ての行動だった。 死の10年以上前、対談で文芸評論家の小林秀雄が述べた。「率直に言うけどね、きみの中で恐るべきものがあるとすれば、きみの才能だね……ありすぎると何かヘンな力が現れて来るんだよ。魔的なもんかな」 この対談で小林が繰り返した「魔」について秋山駿氏が記す。「才能の魔とは、つまり、才能を持っている当の主人を亡ぼすもののことだ。三島氏が抱いている生の『悲劇』のようなものを、早くに直覚したのであろう」(『小林秀雄対話集』講談社文芸文庫)。 三島が、いわば一瞬のうちに沈黙してから35年が過ぎた。しかし作品を開けば、文字は朗々と語り始め、あやなす日本語の魅力は尽きない。自殺の現場の部屋には、当時の刀傷が残っている。
by alfayoko2005
| 2005-11-25 07:55
| LGB(TIQ)
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