カテゴリ
お知らせ トランス LGB(TIQ) HIV/AIDS 米政治 国内政治 ジェンダー・セックス バックラッシュ Books Movies Theatres TV & Radio Music Others Opinions 以前の記事
2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 検索
最新のトラックバック
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
出所者情報提供スタート半年 現状は (東京 2005/11/26)
人手不足 『攻め』に限界 広島市や奈良市の女児殺害事件では、「守り」だけでは悲劇を防げないという難しさも、残念ながら示した。一方、子どもが被害者となった性犯罪の再犯防止に向け、「攻め」の手段として、法務省から警察への「出所者情報」の提供がスタートしてほぼ半年がたつ。当初から、更生を妨げるなど問題点も指摘されたが、その現状と課題は-。 六月から始まった出所者の居住地情報の提供という制度導入は、奈良市の女児誘拐殺人事件で逮捕された小林薫被告(36)=殺人罪などで公判中=が、同事件以前にも女児にいたずらなどをしたとして、懲役刑で服役していたことがきっかけだった。 法務省が提供する情報は、十三歳未満に対する強制わいせつや暴行などの前歴者の出所予定と居住予定地などだ。出所が決まると、全国七十四カ所の刑務所から警察庁や都道府県警を通じ、居住予定地を管轄する警察署に送られる。 対象者を十三歳未満への加害者としたのは、(1)子どもは犯罪の回避能力が低い(2)心身に受けるダメージも大きい(3)保護者など地域社会に与える不安が大きい-などの点が主な理由だが、狙いは再犯防止だ。 ■先月20日までの提供件数は80件 警察庁によると、十三歳未満の子どもを対象にした性犯罪者の「再犯率」は15・9%。しかも、犯歴がある者の四割は以前に同様の性的犯罪を行っていた。同制度は、現行法の枠内での運用で、先月二十日現在での情報提供件数は「約八十件」(法務省矯正局)と、数字だけが明らかになっている。 運用から半年、実際に役立っているのか。 警察庁生活安全企画課の担当者は「犯罪に至らない声かけやつきまといでも、行為者の特定には有効で、次の犯罪に移行させないための指導や警告もできる」と再発防止の効果を強調する。犯罪が起きてしまった場合でも、「情報を活用し、次の犯罪を未然に防ぐことも可能」とするが、「二十四時間体制で(対象に)張り付くことはできない」と限界も認めている。 首都圏のある警察署幹部は「案としては非常に良いが、現実に所轄署で対応できるかというと難しい」と言い切る。「ネックは人員の問題だ。対象が刑務所内で再犯をほのめかしたというような情報があれば、もちろん対応するが、実際は事件・事故の発生対応ですら人が足りない。そんな中で、専従を充てるのは不可能だ」 また別の警察署幹部は「以前から窃盗犯の出所情報はもらっていたが、事件後の摘発には役立つものの、再犯防止には役立たない。性犯罪受刑者の出所情報も同じで、今のところ、役立ったとの話は聞いていない」と冷めた見方だ。 一方、NPO法人・犯罪被害者支援の会「appui(アピュイ)」代表理事の飯島京子氏は「犯罪被害者は自分を傷つけた加害者がどこで何をし、何を考えているかを知りたいと思っている。性犯罪や凶悪犯罪などの罪種に限らず、被害者や家族が望めば、加害者の出所情報などを広く提供してほしい」と話す。 ■海外ではGPS活用 諸外国はどうだろうか。 フランスでは二十四日、仮釈放時に居場所を特定する衛星利用測位システム(GPS)付きの腕輪を装着させる法律が成立した。性犯罪、殺人などの罪で禁固七年以上となった受刑者が対象になる。 アメリカでは、一九九四年の「ミーガン法」が有名だ。ニュージャージー州で前歴者の名前、居住地、写真などを公開したが、他の州にも広がった。韓国でも前歴者の名前をホームページ上で公開、英国では、GPSチップを体に埋め込む実験も始まっている。 このような厳しい監視を日本でも導入すべきか。 常磐大学大学院の諸沢英道教授(犯罪学)は「今、日本がやっている方法で完全に前歴者をマークできればいいが、今後対象者が増えた時、どれだけの数の警察官を動かせるか考えると、効果は低い」と話す。 欧米のように、居場所を警察が常にパソコン上で確認できれば効果は期待できるが、「日本の世論は認めないだろう」とした上で、「前歴者の人権を侵害する恐れはあるが、弱者を被害から守る方がより大切だ」と提言する。現在は警察が情報を公表しないが、当該地域の学校や近隣住民など限定的に市民に情報を提供することも必要だという。今のままでは、再犯が起きた場合、末端の警察官にだけ責任が押しつけられることになるからだ。 「米国などは、刑務所では更生させられないと気付いたから、情報を公開し『自分で身を守って』ということにした。フランスのGPS腕輪もそういう世界の流れの一つ。日本はまだ刑務所の中でできることがあると考えているが、いずれ、このままでは無理だと気付くだろう」 ■期待はできない「心のブレーキ」 一方、米国の事情に詳しい龍谷大学法科大学院の浜井浩一教授(犯罪学)は、ミーガン法について、こう話す。 「再犯が防止できたかどうか、まだ厳密な検証結果が出ていないが、現時点ではあまり肯定的な意見は出ていない。ミーガン法は前歴者の心のブレーキになることを狙っているが、性犯罪は薬物、アルコールの影響下にあるか、幼児わいせつそのものへの依存状態にあることが多く、心のブレーキ効果はあまり期待できない」 また、日本の出所者情報の提供については、法務省時代の刑務所勤務の経験から「申告した場所に帰らない人は、ある意味、社会から孤立しており、帰る所がある人より再犯のおそれがある。今のシステムでは、そういう人を捕捉できない。一方で再犯の可能性の低い人を監視、捕捉すると、それがストレスになり再犯をうながす危険性がある」と指摘する。 北海道大学大学院の白取祐司教授(刑事訴訟法)も欧米並みの監視システム導入には慎重な立場だ。「被害者を出さないための措置は理解できるが、大多数の更生する前歴者の社会復帰の妨げになり、かつ、刑罰以上の社会的な不利益を課すことになるので、冷静に考えるべきだ」 では、どうやって再犯を防げばいいのか。子どもを性犯罪から守る方法はないのか。 前出の浜井教授は「衝動の抑制を訓練する認知行動療法が現時点では最も効果的ではないか。奈良の事件以降、刑務所の更生プログラムが重視され、今、プログラムを作っている最中だ。併せて、きちんと効果を検証するシステム作りも必要」と説明する。 監視社会を選択するのか、一般市民にできることは何なのか。社会全体が、不安からヒステリーになるのではなく、社会全体でこの問題を冷静に考える時が来たともいえる。 白取教授は「再犯の可能性がある者を追い詰めるより、社会、特に地域の防犯への協力体制の方が効果がある。監視カメラや警察に頼ることに傾きがちだが、通学路に子どもが駆け込める場所を設ける、地域の大人が変な人に監視の目を向けるなどできることはいろいろとある。あきらめず、地域が子どもを守ることを意識すれば、変質者は罪を犯しにくくなる」と話した。
by alfayoko2005
| 2005-11-26 22:05
| ジェンダー・セックス
|
ファン申請 |
||