伊、５年ぶり政権交代か 来月総選挙 中道左派、小差リード (読売 2006/03/14朝刊)

伊総選挙　“１回戦”はプローディ氏に軍配　テレビ討論、ベルルスコーニ氏弱音 (読売 2006/03/16朝刊)

　【ローマ＝藤原善晴】４月９～１０日の総選挙投票を前にしたイタリアで１４日、初のテレビ討論が行われた。再選を目指す中道右派のベルルスコーニ首相（６９）が、過去５年間の業績列挙にこだわったのに対し、中道左派野党勢力の次期首相候補、プローディ元首相（６６）は余裕の表情で、税制改革や女性の政治参加推進などの公約を手際よく説明した。

　直後の電話による世論調査では、現首相より７ポイント高い４２・６％がプローディ氏に軍配をあげ、メディアもおおむね同氏優位を伝えた。

　プローディ氏は討論で、首相に「多数派の立場を利用して、議会で自分のための法律ばかり可決したのではないか」と、経済政策の失敗を追及した。

　首相はこれに対し、「経済不振は前政権から引き継いだ巨額の財政赤字などのせいだ」と反撃したが、最後に「イタリア人が知りたいことを伝えられなかったのではないかと心配している」と弱音さえ漏らした。

　テレビ討論は、投票日まであと２回行われる。
　
　写真＝１４日、テレビ討論を前に握手するベルルスコーニ首相（左）とプローディ元首相（ＡＰ）

伊、５年ぶり政権交代か　来月総選挙　中道左派、小差リード (読売 2006/03/14朝刊)

　【ローマ＝藤原善晴】イタリア総選挙は、４月９、１０日の投票に向け、中道右派と中道左派が激しく競り合っている。景気低迷やイラク政策などから、現職で中道右派勢力「自由の家」を率いるベルルスコーニ首相（６９）への不満が高まる中、プローディ元首相（６６）の中道左派勢力「連合」がわずかにリード。５年ぶりの政権交代が実現するかどうかが焦点となる。

　ベルルスコーニ氏とプローディ氏は９６年にも首相候補として対決しており、その際は、プローディ氏に軍配が上がった。今回も最近の世論調査では「自由の家」への支持が４７％なのに対し、「連合」は５１％と、プローディ氏がわずかながらリードする。序盤戦で注目されるのは、１４日に行われるテレビ討論。メディア王でもありテレビ慣れしたベルルスコーニ氏が、巻き返しのきっかけを作れるかどうかがカギだ。

　争点の一つは外交政策。ブッシュ米政権との緊密な関係を売り物にイラク政策でも親米路線をとってきたベルルスコーニ氏だが、昨年３月に伊情報部員が死亡した米軍誤射事件などをきっかけに批判が高まっている。世論の反発をかわそうと、イラク駐留イタリア軍の年内完全撤退を打ち出したが、後手に回ったとの印象が残る。一方、欧州委員会の前委員長であるプローディ氏は、「欧州共通外交」重視という大きな枠組みを論ずる構え。「米国の対イラク戦争は重大な誤り」と断じ、ベルルスコーニ政権の対米協力を批判している。

　最大の焦点である経済政策でベルルスコーニ氏は、大規模公共事業による雇用拡大を説く。また、景気低迷は、９８年にプローディ政権がユーロ導入に伴う通貨リラとの交換比率を交渉した際の判断ミスが原因だと主張している。プローディ氏は、所得税の企業負担分を減らし企業業績を改善すれば雇用機会も拡大できると提案。これによる歳入減は、株や不動産投機などから生じるキャピタルゲインへの課税強化で補うとする。

　このほか世論の関心が高いのは、カトリック教会や中道右派が猛反対する同性間の結婚などの家族倫理の問題だ。自身は敬虔（けいけん）なカトリック信者のプローディ氏だが、中道左派内の多数派の要求で、事実婚や同性間のカップルに税制や相続面での一定の権利を認める折衷的な公約を打ち出した。

　１４日の討論では、ベルルスコーニ氏が、中道左派内でもカトリック色の強い一部支持者の離反を狙って、この問題で議論を仕掛けるのは必至だ。これに対し、プローディ氏は、ベルルスコーニ氏が抱える贈収賄や偽証の裁判や、最近相次いだ現政権閣僚の辞職などを追及する展開となりそうだ。
　
　◇イタリア総選挙、両首相候補の横顔と公約＝表略