筆洗 (東京 2006/05/05朝刊)

筆洗 (東京 2006/05/05朝刊)

　黄金週間でガラ空きとなる東京都心の丸の内や有楽町界隈（かいわい）を、今年もクラシック音楽で埋めようという「ラ・フォル・ジュルネ（熱狂の日）音楽祭２００６」が三日から六日まで、東京国際フォーラムを中心に開かれ、大勢の家族連れでにぎわっている

▼モーツァルト生誕二百五十年の今年は「モーツァルトと仲間たち」と題し、国内外の管弦楽団や演奏家千五百人が結集した。管弦楽曲、協奏曲、室内楽、オペラ声楽を六つの会場で、延べ二百公演行う

▼この催しは一九九五年に、フランスのナント市で町おこしのために始まった。昨年初めて日本に上陸、ベートーベン特集で三十二万人を集めた。今年は周辺のレストランが休日返上で協賛した。最高でも三千円と格安の演奏会チケットはほぼ売り切れの人気で、人出も昨年を上回りそうだ

▼モーツァルトはファンも多く、映画などにもよく使われるので、なじみ深いメロディーが多い。生涯を描いた米映画『アマデウス』（八四年）で、モーツァルトがサリエリに音符を口述筆記させながら事切れる場面で知られる「レクイエム」は、ローザンヌ声楽アンサンブルなどが競演する

▼公式ガイドブックではこの『アマデウス』の場面ごとに流れる曲名を解説、『愛と哀しみの果て』（八五年、米）『エイリアン』（七九年、米）などでの使われ方も紹介、映画ファンにも楽しめる編集になっている

▼期間中、有料コンサートだけでなく、無料の各種イベントもある。こどもの日をはさんで、幼児の入場制限をなくしたのもうれしい。