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特集――小5から必修、中教審報告、「使える英語」に前進?(ニュースがわかる) (日本経済 2006/05/05朝刊)
小学校での英語教育のあり方に注目が集まっている。中央教育審議会の専門部会が五年生からの「英語必修」を求める報告をまとめたことで、様々な反響が巻き起こった。小学校での必修化は「使える英語」の実現に向けた一歩となるか――。日本の学校英語教育の現状を海外との比較も交え点検する。 “Good morning! I’m hungry and thirsty”外国語指導助手(ALT)のオリバーさんがユーモアたっぷりに話し出すと、児童数人が「ミー トゥー」と大きな声で応えた。四月下旬、千葉県成田市立成田小三年五組の英語の授業は笑い声の中で始まった。 英語の歌に合わせて体を動かすウオームアップに続き、この日の主題の「“どっちが好き?”ゲーム」に移った。 オリバーさんがピザとアイスクリームの絵を見せて“Which do you like?”などと質問。児童は二組に分かれ「アイ ライク ピザ!」などと声を上げる。人数が多い方が「勝ち」だが、少ない方も声を張り上げるから教室中に元気な声が響き渡る。整列などの英語の指示にもすぐ反応、英語に慣れた様子がうかがえた。 毎日20分学ぶ 成田小は文部科学省の研究校に指定された一九九六年に「英語科」を設置。現在は全児童が毎日二十分間英語を学ぶ。算数や国語のように四十分授業としないのは「短時間でも毎日行い英語に慣れ親しむため」(江村司教頭)だ。 内容や頻度は同校ほどではないが、国内の小学校の九三・六%が二〇〇五年度に何らかの英語活動を行った。文科省の意識調査では保護者の九割が小学校の英語活動に好意的で、市町村や学校が前向きに取り組む一因となっている。 「使える英語」のための英語教育の改善は古くて新しい課題。中学校の学習指導要領に「外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる」という一節が入り「コミュニケーション」という言葉が初登場したのは八九年。文法・訳読中心の授業からの脱却を目指した。 小学校英語が本格的に教育改革論議の俎上(そじょう)に上ったのは九〇年代後半。九六年の中央教育審議会答申は「必修教科にはしない」としつつ「総合的な学習」や特別活動で、英会話や外国の文化に慣れ親しむべきだとした。小学校の「英語活動」はこの方針に沿った取り組みだ。 文科省は〇一年に小学校英語の事例集を作成して後押しし、〇二年には「中学卒業段階で英検三級程度、高卒段階で準二級―二級程度」という具体的な達成目標を打ち出した。 「教科」にせず しかし同年からの「ゆとり教育」で英語の授業は減少。中教審の委員からは「授業時間数が絶対的に足りない現状では英語が使える日本人の育成など不可能」(杉本義美・京都外国語大助教授)との批判が聞かれる。 こうした中、中教審の外国語専門部会は小五から週一時間程度、英語を必修にすべきだとする報告を三月末にまとめた。「今、なぜ?」との声に、経済・社会のグローバル化やインターネットの普及、九〇%超の小学校が英語活動を実施していることなどを挙げた。 英語を国語や算数と並ぶ「教科」にせず、道徳のような「領域」か「総合的学習」の一環としたのがポイント。教科にすれば成績をつけることで、中学入学前に英語嫌いを生んでしまう可能性がある。会話技術より「積極的にコミュニケーションする態度」の育成を目標にしたことも、同様の配慮に基づく。 「国語力の重視」も強調した。研究校の報告などを踏まえ「週一―二時間程度の英語教育で国語力に支障が生じたことはない」と指摘。「国語がおろそかになる」との懸念の解消に努めている。 文科省は〇六年度内にも学習指導要領を改訂する方針。中教審は早ければ夏ごろに小学校英語を必修化するかどうかの結論を出す見通しだ。 鳥飼玖美子・立教大教授(英語教育)の話 小学校英語の議論には「小学校からやれば英語を使えるようになる」などの誤解や過大な期待があり、導入には反対だ。一例を挙げればインターネット時代に必要なのは英語を書く能力であり、英語の文書作成で苦労しているビジネスマンは多い。 使える英語の習得には「読む・書く・聞く・話す」の四技能を総合的に育てなくてはならない。それには母語が確立し、認知・思考能力が発達した中学校段階の英語教育こそ充実すべきだ。海外研修などで教員の英語力を高め、授業時間数も大幅に増やしてほしい。 海外では、小学校段階から英語を学ばせる国・地域が近年急速に増えている。九〇年代後半からアジアの非英語圏ではタイ、韓国、中国などが相次いで小学校に英語を取り入れた。開始学年やカリキュラムの中身は様々だが、コミュニケーション能力の育成や英語に親しむ活動を重視する点は共通だ。 韓国では、九四年の世界貿易機関(WTO)加盟をきっかけに九七年から三年生以上で週一―二時間の英語学習が必修になった。三年生は歌やゲームを通じ「聞く・話す」活動。四年生でアルファベットを学び、六年生では未来形、比較級など日本の中学レベルの文法も入ってくる。 一般に授業は学級担任が受け持つ。導入前には百二十時間の研修を実施した。英語漬けの生活を体験する「体験学習センター」が国内に約二十カ所あるほか、夏休みには希望者を対象に「英語キャンプ」も行われる。 小学校段階からの親子留学が珍しくないなど、家庭の英語教育熱の高さは日本以上で、国・地方の積極的な取り組みを後押ししている。 中国は〇一年から三年生以上で必修化した。授業時間は週二時間程度だが、地域差がある。主要都市の小学校では一年生から始めるケースも多いという。 中国の特徴は小学校から高校まで一貫したカリキュラムの基準を作ったこと。一級から九級まで九段階の目標があり、六年生で二級、高校卒業時には八級までの到達を求めている。大学でもCETと呼ばれる英語試験に合格することが卒業条件になるなど、社会の中核となる人材の英語力の向上に力を入れている。 欧州連合(EU)は加盟各国の子どもが自国の言葉以外に二つの言語を学ぶことを推進。ドイツが一部の州で〇三年から英語を小学校の必修教科にしたほか、フランスも〇七年からの必修化を目指している。 日本人の先生と外国人の助手で行われる英語の授業(千葉県成田市の成田小学校) Q 小学校で英語活動を必修にする場合の課題は。 A 何と言っても教える側の態勢整備だ。中教審専門部会の報告は当面、英語の専任教員ではなく学級担任が外国語指導助手(ALT)らと協力して授業を進めるのが望ましいとした。現職教員向けの効果的な研修プログラムや、優れた教材を開発する必要がある。 Q 不安はないか。 A 文科省は専門部会の報告が提言したようなコミュニケーション主体の「英語活動」であれば、教科英語の指導法を学んでいない小学校の先生でも可能とみている。成田小学校にもこの春、成田小ほど英語が盛んでない市から転勤してきた先生がいたが、ALTと呼吸を合わせて授業を進めていた。 Q ALTとはどんな人なの。 A 文科省や外務省などが行っている外国青年招致事業(JETプログラム)で来日した人と、地方自治体が独自に採用した人がいる。国籍は様々で、非英語圏出身の人も多い。〇二年度で合わせて約九千人が配置されているが、配置先はほとんどが中学・高校で、小学校専属のALTは〇五年度のJET分で百二十一人しかいない。 Q 必修化するなら大幅に増やさないといけないのでは。 A 確かにそうだが、文科省はALT以外に留学生や海外在住経験者など英語に堪能な人材の活用も検討している。 Q 国語力が低下する心配はないか。 A 中教審の報告は小学校英語を「広い意味でのコミュニケーション能力を育成するための教育の一環」と位置づけ、英語に触れることで国語への関心も高まるような教育内容を検討すべきだとした。実際にどんな授業を想定しているのかは不明だが、国語力の低下懸念には十分に説明を尽くす必要がある。
by alfayoko2005
| 2006-05-07 01:34
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