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たいせつな本
小林秀雄『モオツァルト』 木田元(上) [掲載]2006年05月28日 朝日 第2次大戦敗戦のときまだ16歳だったから、本らしい本を読みはじめたのはそのあとのことになるが、あのころ私たちの世代は、なにもかも小林秀雄に教わったような気がする。 ボードレールもランボオも、正宗白鳥も志賀直哉も、アランもドストエフスキーも、西行も実朝も、ゴッホもセザンヌも、と、こう並べてみると、本当になにもかもだ。 モーツァルトを教えてくれたのも小林秀雄だった。もっとも、彼の『モオツァルト』は敗戦の翌年に発表されていたのに、なぜかすぐには読まなかったようだ。私が最初に手に入れたのは創元文庫版の初版、昭和28年1月の刊行になっている。 これがなんとも衝撃的だった。なにしろ小林秀雄は、アンリ・ゲオンがモーツァルトのかなしさをtristesse allante(トリステス・アラント、疾走するかなしさ)と呼んだことにからめて、こんなふうに言うのだ。 「確かに、モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追ひつけない。涙の裡(うち)に玩弄(がんろう)するには美しすぎる。空の青さや海の匂(にお)ひの様に、万葉の歌人が、その使用法をよく知つてゐた『かなし』といふ言葉の様にかなしい」 あのころ、こんなことを教えてくれるのは、小林秀雄だけだった。それまではベートーヴェンの後期の弦楽4重奏曲やピアノ・ソナタなどを熱心に聴いていたのに、これを読んで、言われるままにモーツァルトの交響曲やピアノ協奏曲、弦楽4重奏曲、5重奏曲と聴いていくうちにすっかりはまってしまい、いまだにその呪縛から脱け出せないでいる。 小林秀雄は、戦争中に「安物の蓄音機」と「僅(わず)かばかりのレコード」で聴きつづけた音を頼りに、戦後1年間「全く他に筆を絶って」この『モオツァルト』を書き上げたと伝えられる。いまは再生装置の性能も再生可能な曲や演奏の数も、信じられないくらい増大している。いまさら小林秀雄でもあるまいとよく言われるが、私にとっては依然としてこれがかけがえのないモーツァルト論である。(哲学者) ♪ 「クラウン仏和辞典」(三省堂)でallanteを引くと、形容詞の用法としては「〈形〉 活動的な; 元気な. 」とあるだけ。つまり、それを「疾走する」と意訳(創作)したのは他でもない小林秀雄である。
by alfayoko2005
| 2006-06-01 12:08
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