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銀の森へ トランスアメリカ 沢木耕太郎 (朝日 2006/08/07夕刊芸能面)
性転換望む父 目見張る演技 単なる偶然なのだろうか。ここ半年、似たような作品をいくつも見てきたように思う。父親が、なんらかの事情で離れて暮らしていた息子を求めて旅をする。あるいは、その息子と共に旅をする。ジャンニ・アメリオの『家の鍵』、ヴィム・ヴェンダースの『アメリカ、家族のいる風景』、ジム・ジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』、さらにチャン・イーモウの『単騎、千里を走る。』もその変形と言えるものだった。 そしてまた、ここに『トランスアメリカ』が現れた。これもやはり息子への旅の物語であり、息子との旅の物語である。 ■ ■ ■ ■ 性同一性障害のために男から女への最後の手術を受けようとしている主人公がいる。だが、その手術の直前、ロサンゼルスに住む「彼」のもとへ、ニューヨークの拘置所から電話が掛かってくる。「彼」の息子が拘置されているというのだ。それはかつて一度だけ交渉をもった女性とのあいだにできた子供だった。セラピストは、その子供との関係を精神的に盤理しないと手術は受けさせられないという。セラピストのサインがなければ医療行為としての手術は受けられなくなる。「彼」は仕方なく、息子に会いに行く。 父親とも名乗らず、単なる善意のおばさんとして拘置所から請け出したものの、十七歳の息子は仲間と荒(すさ)んだ生活をしている。母親がすでに死んでいると知った「彼」は、ケンタッキーに住むという養父のもとへ車で送り届けようとする。 そのようにして、父と息子との東海岸から西海岸へ至る大陸横断の旅が始まることになる。 ■ ■ ■ ■ この「トランスアメリカ」が他の「息子への旅」の作品と違っているのは、まず主人公の「彼」が父親であって父親ではないということである。女装しているからというだけでなく、息子に対する関心の向け方が母親的なのだ。喫煙を注意し、野菜の摂取を勧め、車の窓から体を乗り出すと悲鳴を上げる。 だが、それ以上に大きく異なっているのは、他の作品の主人公が基本的には「強者」であるのに対し、この「彼」が負性を抱えた弱い存在であることだ。「強者」である父親が「弱者」としての息子を求めるのではなく、「弱者」がその負性を隠しながら息子と旅を続けていく。 その結果、この二人の旅のサスペンスは、「彼」が男であり父親であることがいつどのように露見してしまうのか、ということによって生み出される。そして、そのサスペンスは、「彼」を演じるフェリシティ・ハフマンの演技力によって支えられることになる。女優であるハフマンが、「女になりたい男が女装している」というアクロバティックな設定の役柄を勇敢にも引き受けたのだ。 最初のうちは、男と女の境界を行き来するハフマンの演技に目を奪われているが、物語が深まっていくにつれて、「彼」の背負っている哀(かな)しみに関心が移っていく。そして、それこそが、演技者としてのハフマンの勝利を意味することになるのだ。 ■ ■ ■ ■ 旅を終えた「彼」は、いよいよ女への最終手術を受けることになる。そのとき、「彼」がほんのわずかだが変化している。男から女へと性をトランス<横断>する前に、大陸をトランス<横断>したことで、何かが浄化されたのではないかと見えるようになるのだ。それをもたらしたものが、息子という存在だったのか、アメリカの大地だったのか、定かにはわからないのだが。 東京・シネスイッチ銀座などで上映中。(引用者注:8/8現在、名古屋・シルバー劇場、横浜・横浜ニューテアトルでも上映中) R-15指定 沢木耕太郎氏の『銀の森へ』は毎月1回、掲載します。 『トランスアメリカ』公式ホームページ
by alfayoko2005
| 2006-08-08 11:52
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