（２００６米中間選挙）核の火の粉なすり合い 北朝鮮問題

（２００６米中間選挙）核の火の粉なすり合い　北朝鮮問題
朝日 2006/10/18朝刊

　【ワシントン＝小村田義之】北朝鮮の核実験実施の余波が、１１月７日に投票される米国の中間選挙に及びつつある。選挙の行方を決める争点とまではなっていないが、イラク問題などブッシュ政権の外交政策に対する批判が盛り上がっており、その火に油を注ぎかねない状況だ。

●「ブッシュ外交の無策」　民主、政権攻撃強める

　「彼らは北朝鮮の核実験がクリントン前大統領の失敗だったと言う。それはウソだ」

　０４年の大統領選で敗れた民主党のケリー上院議員は１３日、ニューハンプシャー州での同党の集会で、政権批判のトーンを上げた。イラク問題や元下院議員の性的スキャンダルに続いて北朝鮮の核実験を取り上げ、「クリントン大統領のもとで北朝鮮の核計画は凍結された。ブッシュ大統領が外交を捨てた時、北朝鮮は爆弾製造の道に戻り、世界はより危険になった」。「（金正日（キムジョンイル）総書記が）ブッシュの爆弾を手にした」と過激な表現をした上で、政権の対応を「ウソ、ウソ、ウソ、ウソ、ウソ」とこきおろした。

　次期大統領選の民主党有力候補とされるヒラリー・クリントン上院議員も前夜、ニューヨークで演説し、「北朝鮮の核実験はものすごい脅威だ。あの地域にだけではなく、我が国にとってだ。彼らは核をハワイや米国の西海岸に撃ち込むことができるかどうか、ミサイルをテストしている」。イラク問題に話をつなぎ、ラムズフェルド国防長官の更迭を求めた。

　ブッシュ政権にとっては、北朝鮮の核実験がブッシュ政権の外交無策の結果と映り、最大の争点であるイラク問題批判につながるのは避けたいところ。だが、０２年１月の一般教書演説で北朝鮮、イラク、イランを「悪の枢軸」と位置づけ、関連づけたのはブッシュ大統領だけに、その点を民主党側から逆手にとられた格好になっている。

　１６日のライス国務長官の記者会見でも、記者団からは「イラク問題は、北朝鮮やイランなどに対応する能力に影響しないのか」との質問が出た。ライス長官は「私たちは一度にひとつ以上のことができる」とかわしたが、事態を打開する妙手があるわけではない。

　ブッシュ大統領は１１日の記者会見で「二国間の交渉はうまくいかなかった。私は前政権の努力を評価するが、それは機能しなかった」と指摘。北朝鮮との直接交渉には応じない姿勢を改めて強調した。中間選挙が間近に迫るなか、自己否定につながるような路線転換にも踏み切れない。中国を含めた多国間の外交努力を強調しているが、イラク問題と同様に手詰まり感が漂っている。