カテゴリ
お知らせ トランス LGB(TIQ) HIV/AIDS 米政治 国内政治 ジェンダー・セックス バックラッシュ Books Movies Theatres TV & Radio Music Others Opinions 以前の記事
2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 検索
最新のトラックバック
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
HIV感染とブッシュ政権「口封じ」=高尾具成(外信部)
毎日新聞 2006年12月8日 東京朝刊 ◇「倫理・思想」で病気防げぬ--今、持続的支援が急務 HIV(エイズウイルス)感染者130万人を抱えるエチオピアで感染者支援や予防に取り組む非政府組織(NGO)の活動を取材した。そこで知ったのは、米国の政権交代で、翻ろうされるアフリカの支援活動や感染者らの現実だった。ブッシュ政権をはじめ、国際社会は、草の根活動の足かせとなってはならない。アフリカの現状には、各国が将来抱える問題を先取りした姿があると思った。 頭上に食材などを載せて歩いてゆく人波から突然一人の女性が駆けてきた。急停車した車から女性看護師が降り、路上で注射を施した。泣き出しそうだった女性の顔がほころんだ。北部バハルダールで出張看護師による毎月1回のホルモン避妊注射サービスを取材した帰りの出来事だった。彼女にとっていかに貴重な注射だったのかを実感した。 エチオピアでは5人に1人が15歳で結婚し、15~49歳で平均6・1人を出産する。人口7700万人の約8割が日2ドル以下で暮らす状況から働き手確保のため多産傾向にある。しかし、母体への負荷は大きく妊産婦や乳幼児の高死亡率の要因ともなっている。 その現場で「活動に米国の選挙やイデオロギーが影響している」と聞いたのは驚きだった。「グローバル・ギャグ・ルール」(口封じの世界のルール=GGR)の存在だった。米国国外の団体が人工妊娠中絶に関して活動をした場合、米国からの資金援助が凍結されるという米国の規則だ。 今回同行したNGO「国際家族計画連盟」(IPPF、本部・英国)は、女性の権利拡大やエイズ・HIV予防、望まない妊娠の回避など「リプロダクティブヘルス・ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)分野の活動を180カ国以上で行う組織だ。 女性を守るための避妊活動などがルールに抵触するため、エチオピアではブッシュ政権以降、約35%を占めていた米国からの資金拠出が打ち切られた。「積み上げた活動が継続できず、避妊治療薬や避妊具が不足する事態に陥った」と看護師のビズネシェさん(46)らは頭を抱える。 GGRはレーガン大統領が84年の国際人口開発会議(メキシコ市)で発表後、導入。93年にクリントン政権が撤回したが、01年発足のブッシュ政権で再び導入された。以来、IPPFや国連人口基金への米国の資金拠出は途絶えている。 また、ブッシュ大統領が03年1月の一般教書演説で公表した「エイズ救済緊急計画」も課題がある。04年からの5年間、アフリカ(エチオピアも含む)、アジア、カリブの計15カ国にHIV・エイズ対策費150億ドルの3分の2を投じるなどの計画は、一定の評価はあるが、禁欲や貞節を強調し、コンドームによる予防教育などは奨励されない。感染の危険にさらされている売春婦や薬物使用者、男性の同性愛者などへの支援もまれだ。ブッシュ大統領を支持する宗教団体の道徳観が政策に反映されるためだ。 バハルダールの売春街で取材した5人の女性はすべて10代だった。家計が困窮し、田舎から稼ぎに来たが就職先がなかったのだ。「コンドームの使用を拒まれ、トラブルが起きた時は大声をあげて助け合ってきました」とツァハイエシさん(15)らは語る。IPPFの支援でHIV検査やコンドームの活用が広がるが、彼女たちに出口は見えない。 中部ナザレツで会ったエイズ患者のアスカラさん(35)は寝たきりの状態が続く。IPPFの援助で抗レトロウイルス薬治療を続けるが効果はない。8年前に家を出た夫(45)からの感染しか心当たりはなかった。昨年6月以降は信仰するエチオピア正教の教会にも行けなくなった。 「回復を願い、すべての人の健康を祈るだけです」。そう告げるアスカラさんや懸命に生きるツァハイエシさんらを見れば、選挙やイデオロギー優先では差し迫った現実に対応できないことは明らかだ。米中間選挙の民主党躍進で変化の兆しがあるというが、IPPFのバレリー広報部長(55)は「この間にも支援が提供されず計り知れない数の妊産婦が死亡し、HIV感染も拡大している」と訴える。 00年にIPPFに設けられたエイズ・HIV対策の日本信託基金はエチオピアの農村まで認知され、役立っていた。とはいえ、日本の政府開発援助の国際機関への任意拠出は21世紀に入り6年連続で減少している。持続的な支援が必要だ。人ごととせずに、アフリカ支援と向き合うことは、90年代半ばに比べて倍増し、感染者が推定1万7000人にもなった日本での感染防止と無縁ではないと思う。 ============== 「記者の目」へのご意見は〒100-8051 毎日新聞「記者の目」係へ。メールアドレスkishanome@mbx.mainichi.co.jp 毎日新聞 2006年12月8日 東京朝刊
by alfayoko2005
| 2006-12-09 22:29
| HIV/AIDS
|
ファン申請 |
||