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特集ワイド:珍「産む機械」失言 外国人特派員の目
毎日新聞 2007年2月13日 東京夕刊 ◇What? あきれて(バース・ギビング・マシン)飛びついた(ベビー・メーキング・デバイス) 「日本の首相、“バース・マシン”ミニスター(“産む機械”大臣)を擁護」--。日刊紙「ジ・オーストラリアン」(発行部数約13万部)は、先月31日付紙面(電子版)でこんな見出しを掲げた。柳沢伯夫厚生労働相の発言は、海外メディアにとって大ニュースではないが、「面白トピック」「あきれた話」としてすぐに飛びつきそうなネタだ。在京特派員は、発言をどう伝えたのか。「マシン発言は日本に関心のない米国の地方の人まで知っている」。そう語る英ロイター通信と、米ニューヨーク・タイムズ紙のともに米国人の担当記者に聞いた。【藤原章生】 ◇常識外れ「日本の神経逆なで」--ロイター通信東京特派員のリンダ・シーグさん ◇「非人間扱い」はっきり表現--NYタイムズ東京特派員のマーティン・ファクラーさん 1月27日、ロイター通信からの第一報を世界に流したのは、在京25年の特派員、リンダ・シーグさんだった。「土曜日だから家で(パソコンで)共同通信の英文記事を見ていたら『バース・ギビング・マシン(Birth‐giving machine)』っていう言葉に目が留まり、『は?』っと」。シーグさんはあぜんといったポーズをしてみせた。 「何を言ったんだろうと日本語版を見たら『産む機械、装置』とあった。これは問題になる可能性が相当あると、すぐに『共同が伝えた』という短い記事をロンドンに送りました」 特派員の業務は、独自取材のほか、担当地域のニュースを精査して伝える「転電」がある。「○○通信によると」「××新聞がこう報じた」といった記事だ。「ただの翻訳」とも言えるが、日々のニュースから何を選ぶか、センスが問われる。 シーグさんがそばにいた日本人の夫に「発言、どう思う?」と尋ねると「常識外れだね」という答えが返ってきたという。 「ニュース価値が二つあった。まず発言そのものが柳沢大臣の(地位を脅かすといった)問題になる。それに加え、支持率が落ちている安倍政権の問題が膨らみ、選挙など今後の政治情勢に影響する」と読んだ。 シーグさんは第一報の後、「“産む機械”失言が日本の神経を逆なで」という長文の分析記事をまとめた。そこでは「柳沢発言は、男性で占められる日本の権力社会にしみ渡る、根深い視線を映し出している」と話す学者や、「物のように扱われ、侮辱された気持ちがする」という26歳の女性の声を紹介している。 * 一方、ニューヨーク・タイムズのマーティン・ファクラー記者は27日のニュースを聞き「女性を人間扱いしていないのでちょっと驚いた」ものの、すぐに記事にはしなかった。理由の一つは、新聞社の特派員の場合、通信社とは違い、日々のニュースを転電する必要がないためだ。 「うちの特派員はスポット(ニュース記事)よりもフィーチャー(企画記事)を大事にしている。読者はニュースをヤフー(などのネット配信)で見られるから、新聞にはロイターやAP(など通信社電)とは違う、独自の記事が求められている」。つまり、記者が独自の分析記事やルポルタージュを書くため、ニュース報道に労力を割かないよう努めているのだ。 もう一つ、ファクラーさんには「もしかしたら……」という疑いも多少あったようだ。 「日本には女性差別があるが、イスラム圏のようなことはないし、ラテン諸国や韓国のように男らしさをアピールするマチズモ(男性優位主義)とも違う。どちらかというと、女性が家を守り男性を支える、米国の1950年代風、昔懐かしいオールドファッションというイメージがある」 だから、日本人はこれをさして問題にしないかもしれないという思いもあった。しかし、発言の2日後になって記事にしたのは、国会ばかりでなく男性も含めた社会から「意外なほどの反発」があったからだ。そして、国際面のミニニュース欄に「日本で、女性についての大臣発言に激怒」という記事を載せた。 「国会でいろいろ言われ、柳沢大臣が辞任するかどうか、インパクトがあると思い、書くべきだと思った。日本人が何を考えているかを伝えるのが僕の仕事だから、この場合、日本のマスコミが大きな判断材料になった」 ただ、「これで安倍政権が倒れるわけでもないので」1段落で終わる短い記事にまとめた。ただし、一語一語に工夫が込められている。 大方の通信社が「産む機械」を「バース・ギビング・マシン」と訳したのを、ファクラーさんはあえて「ベビー・メーキング・デバイス(Baby‐making device)」にした。 「『産む』をバーシングやバースだと、なんだか病院に置いてある『避妊』関係のモノというイメージが浮かぶ。日本語は主語、目的語がなかったりあいまいでしょ。だから、あえて目的語のベビーをつけた。それと、本人は機械、装置と両方言っているけど(訳語を)マシンじゃなく(より非人間的な)デバイスにした。その方が女性を人として見ていないことがはっきりするし、日本の世論が何に対して怒っているのか、うまく伝わると思ったからです」 記事は毎日新聞の世論調査を引用し「発言に対する騒ぎで、すでに支持率が落ちている安倍(晋三)首相は、ダメージからの回復に躍起になっている」と、政治情勢に焦点を当てている。 「女性だけでなく一般人も『これはいけない』と言い始めたことが、世論とのギャップに全く気づいていない、素人っぽい安倍政権を物語っている。男性中心の日本ではまだ女性に制限があり、平等ではないけれど、これほどはっきりと『機械』だなんて言うのはやはり珍しい。そういう見方が少子化にも関連しているのに、安倍さんはそれにも気づいていない」 * こうした閣僚発言が英語圏であったら、どうなるか。 「こういう事例は全く考えられないけど、多分、その人は政治的にもうおしまいでしょう」とファクラーさんは言う。一方、シーグさんは「前例を調べたけれど、米国などには女性をさげすむ例があまりないので分からない」と言う。「ただ、米国では、人種差別発言が今もあり、その場合は議員を辞めなくても、ポストを去る例が多い」 でも単純には比べられない。日本は石原慎太郎東京都知事の「三国人発言」のように、権力の座にある人物が平然と弱者や女性差別の暴言を吐き、依然その座にとどまれる国なのだ。 「でも、今回これだけ人々が反発したということは、日本人の考え方が変わってきているんじゃないでしょうか。女性は家にいて子育てしてろという人でさえ、『機械』という言葉はいけないと思ったのでしょう」とシーグさん。いずれにせよ、今回の柳沢発言は、極めて珍しい日本特有の現象だったようだ。「安倍さんは新しい保守と言うけど、今回の反応なんか見ると、全然オールドですよ」とファクラーさんは繰り返した。
by alfayoko2005
| 2007-02-13 19:02
| ジェンダー・セックス
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