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![]() 『楊貴妃になりたかった男たち』武田雅哉著 (産経 2007/03/19) ■女装者を通して見る中国史 「月も朧(おぼろ)に白魚の篝(かがり)も霞む春の空…こいつあ春から縁起がいいわえ」。百両を奪い、悪びれずに朗唱する女装の白浪(盗人)。河竹黙阿弥作「三人吉三」の名場面だ。幕末歌舞伎ならではの倒錯美、悪の華である。 と思いきや、中国には美女に化けて相手を油断させ、盗みや婦女暴行を働くワルが大昔からごまんといたらしい。犯罪目的のみならず、趣味の女装癖から縁起かつぎ、商売、スパイ、性同一性障害によると思われる女装まで、あらゆる事例がそろっていた。 本書は、そんな古今の異聞奇譚を渉猟しながら描く女装の歴史。女になりすますコツを伝授する泥棒の師匠やら纏足(てんそく)を擬装する器具のエピソード、学生演劇ではなぜかもっぱら女形だった周恩来(写真あり!)まで登場して驚きに満ちている。 彼ら女装者たちを通して見た中国社会も興味深い。例えば、男に身をやつした女が「男装の麗人」と美称され、しばしば歴史に名を残しているのに対し、女になろうとした男の多くは冷眼視され、滑稽(こっけい)に扱われている。例外は楊貴妃を演じて好評を博した京劇役者・梅蘭芳くらいか。伝統社会のジェンダー観が如実に表れているのだ。 また奇異な身なりは古来「服妖」と呼ばれ、世界への脅威や凶兆とされた。陰陽を転倒させる女装も、為政者や秩序を重んずる人々にとっては服妖である。お上や世間がモンスターをいかに畏(おそ)れ、嫌悪するか。正体がバレた女装者たちへの仕打ちを見るとよくわかる。 教科書に載る偉人より、女装ごっこを妹に見とがめられる情けない青年の方に親近感を覚える、という著者のあたたかい眼差(まなざ)しによって日の目を見たモンスターたち。ぎくしゃくした話題が多い中、久々に楽しい中国に出合えた。 残念なのは、本書が黙阿弥さんの時代に間に合わなかったこと。何しろ芝居に翻案できそうな荒唐無稽(むけい)なお話がゴロゴロしているのだから。(講談社選書メチエ・1785円) 翻訳家 瀬川千秋 ◇ 【プロフィル】武田雅哉 たけだ・まさや 北海道大学大学院教授。専門は中国文化史、中国文学。『蒼頡(そうけつ)たちの宴』でサントリー学芸賞。 (2007/03/19 07:47)
by alfayoko2005
| 2007-03-19 13:12
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